実は答えられない人が多い!会社の目的は「何でも屋さん」ではダメなのか?

会社の目的はその権利能力の範囲を画するものです!

 会社の目的といわれますと、会社の存在目的、例えば、「お金持ちになりたい」という社長様ご自身の夢や、そのために「儲かる法人を作りたい」などのいわゆる目標がまずは思い出されますが、法律はそこまでセンチメンタルではありません。

 

法律で「目的」とあれば、目標という意味はなく、むしろ対象内容という意味に理解した方が納得できることが少なくありません。これは古くからある日本の法律が、外国の法律を参考にすることが多く、直訳がそのまま日本の法律の文言とされたことによります。

 

さてそうしますと、会社の目的とは、いわば事業内容を意味することになりますが、ではなぜ事業内容を予め決めなければならないのでしょうか。「何でも屋さん」を事業内容に据えて会社を経営することは認められないのでしょうか。

この点、法人の目的として登記できるか否かの観点から見た審査基準がありますので、それをまずは眺めてみたいと思います。 

「具体性」 法人登記の「目的」として必要な条件か?

かつて会社の目的は、具体的に記載されなければならないとされていましたが、会社法が制定された平成18年4月以降改正され、現在では「具体性」は目的の必要条件ではないとされています。

なぜ具体性が会社の目的の必要条件でなくなったのかですが、かつて類似商号は法律で禁止されていたのですが、それでも類似商号を使用する人は後を絶たず、彼らは会社の目的を必要以上に細分化し、法規制をかいくぐっていました。その頃であれば、目的に具体性を求めることで、脱法行為をけん制する必要があったのですが、上記会社法の制定により、類似商号規制は撤廃されました。これに伴って会社の目的に具体性を求める必要がなくなったということであります。 

「明瞭性」 法人登記の「目的」として必要な条件か?

明瞭性とは、字義の通り、言葉の意味が「明」らかであり、一般人にとっても「瞭」然(分かり易い)としていることをいいます。

法人登記が誰にでも閲覧可能なものである以上、その言葉の意味が明らかで一般人にも分かり易くあることは当然要求される事項といえます。それゆえ「明瞭性」は目的の必要条件であるとされています。

実際には、専門用語や外来語や新しいジャンルの用語などに関し明瞭性が問題になります。これらの用語には

言葉の意味にブレはないでしょうが、一般人にも分かり易いかと問われると疑問

否かですが、ここで登場するのが広辞苑やイミダスといった辞書なのであります。辞書に記載されるようになれば、その言葉はもはや一般人に分かり易いものとされているのです。 

「適法性」 法人登記の「目的」として必要な条件か?

適法性とは、要するに、会社の目的はブラックやグレーではなくホワイトであれということです。

ブラックの例とすれば、法人登記申請を会社の目的とすることは司法書士法違反となり、医療行為を会社の目的とすることは医師法違反になります。グレーの例とすれば、愛人・不倫関係、差別的なものといった公序良俗違反のものをいいます。

なお、法人として許認可を申請する予定で、許認可が下される前から予めその許認可に係る事業を法人の目的として掲げることがありますが、許認可の条件として一定の資本金の計上が求められているならば、資本金の計上を行った上で予め許認可に係る事業の目的を登記すべきでしょうし、許認可が下される可能性が失われたならば、速やかに許認可に係る事業の目的の登記を抹消すべきでしょう。

かように当然のことですが、「適法性」は目的の必要条件であるといえます。 

「営利性」 法人登記の「目的」として必要な条件か?

会社が営利法人として儲けることを目指す以上、会社の目的も営利の性質を帯びることは自然なことといえますし、非営利の目的を掲げていたのでは営利法人の体をなさないことになりかねません。そういったことから、会社の目的にはその事業によって利益が出るものに限られます。例えば、政治献金そのものやボランティアそのものは、それによって利益を出すことはできませんから、営利性がなく会社の目的として認められないことになります。このように「営利性」は目的の必要条件です

このように会社の目的には限度があります。

会社は自然人と並んで権利義務の帰属主体として法律上認められています。

ですが権利義務は一定の目的を達するための目に見えない観念的な道具にすぎません。

目的が達せたならばもはや観念する必要はなく存在意義を失って消滅させねばなりません。

それなのに同様に目に見えない観念的な存在である会社の目的が無限に認められるならば、会社にとって不必要な権利義務が無限に作り出されることになりかねません。権利義務の発射台としての会社の目的を限定することで、必要な限度で権利義務というロケットを発射しようとしているのではないでしょうか。

最後に、くだんの「何でも屋さん」という目的ですが、仮にこれが認められると、この目的だけで全てが足りてしまい、他に目的を定める必要がなくなってしまうでしょう。これでは目的に対し上記の規制を敷いた意義が失われます。したがって「何でも屋さん」は、会社の商号にするならともかく、会社の目的にすることには難ありといえそうです。